結論
3局面とも、X打ちは最善ではありませんでした。最善手との差は 6石から20石。損の大きさが局面によってこれだけ違うので、「X打ちは常に大損」とも「たいしたことはない」とも言えない、というのがこの検証の結果です。
今回検証すること
オセロには昔から、X打ち(隅のナナメ隣=b2・g2・b7・g7)とC打ち(隅のタテヨコ隣=a2・b1 など)は避けよ、という原則があります。相手に隅を渡す筋を作りやすいからです。ただ「なんとなく危ない」で終わりがちなので、ここでは実際の局面をソルバーで最後まで読み切って、どれだけ損なのかを石差で確かめます。
検証方法
数値はすべて、当サイトの自作ソルバー(negamax+αβ枝刈り)の出力です。空きマスの少ない終盤の局面を選び、打てる手を1つずつ実際に打って、そこから終局まで完全に読み切っています。評価関数も近似も使っていないので、ここに出る石差は推定値ではありません。1局面だけでは偶然と区別がつかないので、条件のそろった局面を3つ解析しました。
局面ごとの結果
この局面で黒が打てる手は7つ。そのすべてを、ゲーム終了まで完全に読み切った結果が次の表です。石差は「黒からみた最終石差(両者最善)」で、プラスなら黒の勝ち、マイナスなら黒の負けです。
| 着手 | 返す枚数 | 最終石差 | 種別 |
|---|---|---|---|
| g4 | 1 | +12 | — |
| e1 | 5 | +12 | — |
| a5 | 2 | +6 | — |
| b7 | 2 | ±0 | X打ち |
| e8 | 1 | −2 | — |
| g1 | 1 | −10 | C打ち |
| a7 | 1 | −12 | C打ち |
なぜこの結果になるのか
最善は g4 で、最終 +12。しかも返す石はたった1枚(f5)という、まったく地味な手です(同じ +12 で e1 も最善タイ)。「派手に返す手=良い手」ではないことが、ここでもはっきり出ています。
問題のX打ち b7 は ±0=引き分け。最善の g4 と比べて12目も損をしています。勝てる局面を、わざわざ引き分けまで落としてしまう手です。
さらに悪いのがC打ちです。a7 は −12、g1 は −10で、どちらも黒の負け。隅のすぐ隣に打つと相手に隅を渡す筋ができ、完全読みでも大きく負けに転じることが、数値ではっきり分かります。
例外と注意
この局面でいちばん損をしたのは、X打ちではありませんでした。X打ちの b7 は ±0 の引き分けで踏みとどまり、それより大きく負けたのは C打ちの a7(−12)と g1(−10)です。「XとCは危険」とひとまとめに覚えると、どちらがどれだけ重いのかを見落とします。
また、危険なマスさえ避ければよい、という話でもありません。e8(−2)はXでもCでもない普通の手ですが、それでも黒の負けです。避ける手を覚えるより、空きマスが少ないなら最後まで読むほうが確実です。
最善手を打つとこうなる
最善の g4 を打つ様子です。石を置いたあと、返る石が1枚ずつ順に裏返ります。金色の枠が着手したマス、金色のリングが返った石です。
手順・数値は 編集方針 のとおり、実際の計算結果をそのまま載せています。
ほかの局面でも同じか
同じことが別の局面でも起きるのか、X打ちが打てる局面をほかにも選んで完全読みしました。
| 局面 | 最善手 | 検証した手 | 差(石) |
|---|---|---|---|
| ケース 1 | g4 +12 | b7 ±0 | 12 |
| ケース 2 | e8 +20 | g2 +14 | 6 |
| ケース 3 | d1 +12 | b2 −8 | 20 |
3局面での差は 6石から20石まで開きました。最善手を外したときの代償は、局面によってこれだけ違うということです。
ケース 2|空き10マス
最善は e8(最終 +20)。X打ちの g2 は +14 で、差は 6石でした。
| 着手 | 返す枚数 | 最終石差 | 最善との差 |
|---|---|---|---|
| e8 | 4 | +20 | 基準 |
| d2 | 2 | +14 | -6 |
| g2 | 5 | +14 | -6 |
| d8 | 5 | +12 | -8 |
| h6 | 2 | +12 | -8 |
| g4 | 6 | +10 | -10 |
| h4 | 3 | +10 | -10 |
| h2 | 5 | +6 | -14 |
ケース 3|空き10マス
最善は d1(最終 +12)。X打ちの b2 は −8 で、差は 20石でした。
| 着手 | 返す枚数 | 最終石差 | 最善との差 |
|---|---|---|---|
| d1 | 6 | +12 | 基準 |
| a8 | 1 | +10 | -2 |
| a4 | 3 | −2 | -14 |
| b2 | 8 | −8 | -20 |
| a3 | 5 | −10 | -22 |
400局面ではどうだったか
ここまでは、選んだ局面を1手ずつ完全に読み切った結果です。同じ問いを、無作為に選んだ 400局面(空きマス10、合計2617手)でも数えました。
X打ちが打てたのは 153局面。そのうちX打ちが最善だったのは 14局面(9.2%)でした。打てるたびに必ずX打ちを選んだとすると、最善手と比べて平均 16.77石の損になります。
この検証で言えること・言えないこと
- 言えること:この3局面については、全合法手を終局まで完全読みした厳密な結果です。近似ではありません。
- 言えないこと:3局面はオセロのごく一部です。すべての局面で同じになるとは言えません。より広い集計は400局面の集計をご覧ください。
- 前提:石差は「両者が最後まで最善を打ったら」という前提の数字です。
- 再現方法:局面と結果は
assets/othello-analysis.jsonにあり、tools/generate-othello-analysis.mjsで作り直せます。
実戦で覚えること
- 3局面とも、X打ちは最善ではなかった
- 3局面での差は 6石から20石まで開いた。損の大きさは局面しだい
- 400局面でも、X打ちが最善だったのは9.2%どまり
- 隅が空いているあいだは、X打ちを候補から外して考える
自分で試す
ここで見た局面は、実際に並べて確かめられます。1手ごとに評価が動くので、良い手とそうでない手の差が、その場で目に見えます。