結論

終盤400局面(空きマス10、合計2617手)を完全読みして数えたところ、隅を取る手が最善だったのは 50.8% でした。隅が打てた246局面のうち、およそ半分では隅を取らない手のほうが良かったことになります。

損の大きさで見ると、隅を取ったときの損は中央値 0石(半分の局面では隅が最善)、平均 5.11石。ただし1割の局面では 16石以上損し、最大は 38石でした。隅を取ったことで勝ちを手放した局面も 22 あります(隅が打てた246局面の 8.9%。最善なら勝てた165局面に限れば 13.3%)。平均は小さいが、外れるときは大きく外れる——それがこの標本の姿です。

今回数えたこと

これまでの検証記事では、ひとつの局面を取り上げて候補手を比べてきました。ただ「この局面ではこうだった」という話には、どうしてもたまたまそうなっただけではないかという疑問が残ります。

そこで今回は、局面をまとめて解いて数えました。オセロの終盤は最後の一手まで読み切れるので、「よく言われる打ち方が、実際に何%の局面で最善だったか」を、推測ではなく数として出せます。

調べ方

ランダムな合法手で対局を進め、空きマスが10になった黒番の局面を集めました。同じ局面は数えず、打てる手が3つ以上ある局面だけを対象にしています(選択の余地がない局面を数えても意味がないため)。

集めた各局面で、すべての合法手をゲーム終了まで完全に読み切り、最終石差を求めました。ある手が「最善だった」とは、その局面で最も良い最終石差に並んだ、という意味です(同着も最善に数えています)。

数え方を具体的に書きます。1局面につき1回数えます。「損」は最善手の最終石差 − その打ち方の最終石差で、最善に並んだときは0です。隅が2つ以上打てる局面(246局面のうち84局面)では、良いほうの隅で数えています(「隅を取る」という打ち方を、最も有利に見積もるためです)。分母は、その打ち方が選べた局面の数です(返す枚数は常に選べるので400、隅は246、X打ちは153)。

解析方法
完全読み(negamax+αβ枝刈り、終局まで)
局面数
400
解いた手の数
2617
空きマス
10(黒番)
1局面あたりの合法手
平均 6.54手

結果

「対象局面」はその打ち方が選べた局面の数、「最善だった割合」はそのうち最善に並んだ割合です。「損」は最善手との最終石差の開き。中央値は小さい順に並べた真ん中の値、最大はこの400局面で実際に出た最悪の値です。

「勝ち落とし率(対象局面比)」は、その打ち方が選べた全局面を分母にした割合です。つまり「最善を打てば黒の勝ちだった局面で、その打ち方を選んだために勝ちでなくなった局面数 ÷ その打ち方が選べた局面数」。引き分けは勝ちに数えません(勝ちが引き分けになった場合も「勝ちを落とした」に含めます)。隅が2つ以上ある局面では、損の計算と同じく良いほうの隅で勝ち負けを判定しています。

もう一方の見方として、最善なら勝てた局面だけを分母にした割合も出せます。たとえば隅なら、隅が打てた246局面のうち最善なら勝てたのは165局面で、そのうち22局面(13.3%)で勝ちを落としました。表に載せているのは前者(対象局面比)です。

打ち方対象局面最善だった割合平均の損損の中央値最大の損勝ち落とし率(対象局面比)
隅を取る手24650.8%5.110388.9%
最も多く返す手40019%13.99126023.8%
最も少なく返す手40022.5%11.1384820.5%
X打ち1539.2%16.77166031.4%

割合だけでは実感しにくいので、この400局面から1つ出します。隅を取ることがいちばん高くついた局面です。黒番で隅 h1 が打てますが、取ると −22 で黒の負け。最善は a2 の +16 で、その差は 38石あります。

盤面BBBBB..WWB.B.BWWWWBWBWW.WWWWWWWBWBWWBWWBWBWWWBW..WWWWWW.WWWWW.B. black

87654321
abcdefgh
黒番。隅 h1 は打てるが、取ると −22。最善は a2(+16)。
着手返す枚数最終石差備考
a25+16—
h33−12—
f11−22—
h11−22隅
e74−26—
h62−32—
g86−38—

読み取れること

隅は、やはり群を抜いて信頼できます。最善だった割合は 50.8% で、他の打ち方の2倍以上。損の中央値は 0石、平均 5.11石で、どちらも他の打ち方よりはっきり小さい値です。

ただし「まず外さない」とまでは言えません。1割の局面では 16石以上の損で、最大は 38石。最善なら勝てた165局面のうち、隅を取ったせいで勝ちでなくなったのも 22局面(13.3%)ありました。上に出した局面が、その最大の 38石の例です。平均が小さいことは、大きな損がまれであることの証明にはなりません。

隅が打てた246局面のうち約半分では、隅より良い手がありました。同じ隅でも価値は違うで見たように、終盤は隅の有無ではなく、最後まで読んだ結果で決まります。

返す枚数は、ほとんど当てになりません。最も多く返す手が最善だったのは 19%、損は中央値 12石・平均 13.99石で、最善なら勝てた局面のうち勝ちを落としたのは 41.1%。逆に最も少なく返す手も 22.5%、中央値 8石・平均 11.13石でした。「多く取れ」も「少なく取れ」も、終盤では手の選び方の基準にならないということです。序盤〜中盤で有効な「少なく取る」の考え方を、終盤にそのまま持ち込むと外れます。

X打ちは、やはり最も損でした。最善だった割合は 9.2% と最低で、損は中央値 16石・平均 16.77石。最善なら勝てた95局面のうち、X打ちで勝ちを落としたのは 48局面(50.5%)。ここに挙げたどの打ち方より高い値です。避けるべき手という定説は、数の上でも裏づけられました。

この数字の限界

正直に書いておきます。集めた局面はランダムな手で進めた対局から取ったもので、強い打ち手どうしの実戦で現れる局面とは分布が異なります。実戦では、そもそもX打ちを打たされる形自体が避けられていることもあります。

また、対象は空きマス10の終盤です。序盤・中盤には当てはまりません。ここで言えるのは「終盤に入ってからの手の選び方」についてだけです。

数字そのものは確かめられます。この記事のすべての数値は othello-stats.json に入っていて、tools/generate-othello-stats.mjs が書き出したものです。局面の抽出は固定した乱数の種(seed)で行っているので、同じスクリプトを走らせれば同じ400局面・同じ数値が出ます。完全読みなので、エンジンの強さや探索深さには依存しません。

実戦で覚えること

  • 終盤で迷ったら、まず隅を候補に入れる(最善率が最も高い)
  • ただし隅が最善なのは約半分。最大 38石の損もあるので、取る前に最後まで読む
  • 返す枚数の多い少ないは、終盤では判断材料にならない
  • X打ちは最善になりにくく、外したときの損も最大

オセロ道場で確かめる

終盤の一手を、評価を見ながら選び直せます。登録不要、完全無料。

⚫ オセロをプレイ

関連するガイド