結論
終盤の局面を2つ完全に読み切り、最善手と2番目の手を比べました。差は 4石から28石。同じ一手の選び方でも、局面によって重みがまるで違う、というのがこの検証の結果です。
今回検証すること
終盤に入ると、残りの手は数えるほどしかありません。そのなかで最善手を選べたかどうかは、結果をどれだけ動かすのでしょうか。ここでは最善手と2番目に良い手の差を、空きマス8の終盤で全合法手を読み切って測ります。差が小さければ「どれを選んでも大差ない」ということですし、大きければ、その一手が勝敗そのものを決めていることになります。
検証方法
数値はすべて、当サイトの自作ソルバー(negamax+αβ枝刈り)の出力です。空きマスの少ない終盤の局面を選び、打てる手を1つずつ実際に打って、そこから終局まで完全に読み切っています。評価関数も近似も使っていないので、ここに出る石差は推定値ではありません。1局面だけでは偶然と区別がつかないので、条件のそろった局面をもう1つ解析し、さらに隅の価値の検証で読み切った局面も比較に使いました。
局面ごとの結果
黒が打てる手は6つ。そのすべてを終局まで読み切ると、次のようになりました(石差は黒からみた最終石差、両者最善)。
| 着手 | 返す枚数 | 最終石差 | 備考 |
|---|---|---|---|
| a1 | 1 | +14 | 最善 |
| h4 | 6 | −14 | 2番目 |
| h8 | 1 | −18 | 隅 |
| g1 | 1 | −22 | C打ち |
| d8 | 7 | −24 | — |
| g7 | 9 | −28 | X打ち |
なぜこの結果になるのか
最善の a1 は +14 で黒の勝ち。2番目の h4 は −14 で黒の負けです。順位はひとつ違うだけなのに、勝敗そのものが入れ替わっています。差は28石。終局時に盤を埋める石64個のうち、4割を超える幅です。
ここでも返す枚数は逆を向いています。a1 が返すのは 1枚だけ。いっぽう h4 は6枚、最下位の g7 にいたっては9枚返します。「たくさん返す」と損をするで見たことが、この局面でも起きています。
例外と注意
この局面では、2番目の手を選んだ瞬間に負けになります。ただし、いつもこうなるわけではありません。同じ空きマス8の終盤でも、最善と2番目の差が4石しかない局面がありました(下の表)。そこではどちらを選んでも黒の勝ちは動かず、変わるのは勝ち幅だけです。
隅の価値の検証で使った局面では、この差は8石でした。4石・8石・28石。「終盤の一手」は、局面によってこれだけ重さが違います。時間をかけて読むべき局面かどうかは、まずそこを見極めることになります。
最善手を打つとこうなる
最善の a1 を打つ様子です。石を置いたあと、返る石が1枚ずつ順に裏返ります。金色の枠が着手したマス、金色のリングが返った石です。
数値は 編集方針 のとおり、実際の計算結果をそのまま載せています。
一手の重みは局面によって違う
この差がいつもこれほど大きいわけではありません。同じ空きマス数の終盤を、もう1局面読み切って比べました。
| 局面 | 最善手 | 検証した手 | 差(石) |
|---|---|---|---|
| ケース 1 | a1 +14 | h4 −14 | 28 |
| ケース 2 | c1 +8 | a2 +4 | 4 |
2局面での差は 4石から28石まで開きました。最善手を外したときの代償は、局面によってこれだけ違うということです。
ケース 2|空き8マス
最善は c1(最終 +8)。2番目に良い手の a2 は +4 で、差は 4石でした。
| 着手 | 返す枚数 | 最終石差 | 最善との差 |
|---|---|---|---|
| c1 | 1 | +8 | 基準 |
| a2 | 1 | +4 | -4 |
| g2 | 1 | ±0 | -8 |
| h2 | 3 | ±0 | -8 |
| f1 | 1 | ±0 | -8 |
| b1 | 1 | −2 | -10 |
この検証で言えること・言えないこと
- 言えること:この2局面については、全合法手を終局まで完全読みした厳密な結果です。近似ではありません。
- 言えないこと:2局面はオセロのごく一部です。すべての局面で同じになるとは言えません。より広い集計は400局面の集計をご覧ください。
- 前提:石差は「両者が最後まで最善を打ったら」という前提の数字です。
- 再現方法:局面と結果は
assets/othello-analysis.jsonにあり、tools/generate-othello-analysis.mjsで作り直せます。
実戦で覚えること
- 最善手と2番目の手の差は 4石から28石まで開いた
- 差がほとんどない局面もあれば、一手で勝敗が入れ替わる局面もある
- 「終盤はどれも似たようなもの」と考えない。空きマスが少なければ読み切れる
- 差が小さい局面では、読みの時間はほかの手に使ってよい
自分で試す
ここで見た局面は、実際に並べて確かめられます。1手ごとに評価が動くので、良い手とそうでない手の差が、その場で目に見えます。